エビスマイスターが魅せた
意地のドリフト
横浜ゴムプレゼンツで開催されている、FDJ2。昨年同様、使用タイヤはYOKOHAMA ADVAN NEOVA AD09となる。さらに、今年からは「MID WHEELS」のワンメーカー・ワンメイクルールを採用。これによりタイヤ&ホイールは同一条件となり、イコールコンディションにより近い形で開催されている。そんななかで行われているFDJ2は、今年も激しい首位争いを演じている。第1戦の富士スピードウェイでは、FDJ3からの昇級組や今年から参戦してきた選手が表彰台を独占し、第2戦では15歳の中村総士郎が昨年チャンピオンを倒し優勝した。常に新しいドラマを作り続けているFDJ2。第3戦のエビスサーキット西コースラウンドも、感動的なフィナーレとなった。
強い新世代の時代が到来か!?
21歳のセナが魅せた迫力の単走
ルーキーが2勝中のFDJ2だが、このままルーキーの独走は許さないと、これまでFDJ2を戦ってきたドライバーが虎視眈々と上位進出を伺う第3戦。舞台はドリフトの聖地・エビスサーキットの西コースで開催された。
審査は、西コースの逆走で行われ、1コーナーに1アウトゾーン、そこから振り返してコース上に設置されたコンクリートウォールに向かってそれを沿うように設けられた2アウトゾーン。この2つのゾーンが各10ポイント(ライン・アングル)ずつあり、高得点を目指す上で重要なポイントとなる。そこからタッチアンドゴーがあり8の字を描くように下っていき、インクリップを通過して最後の3アウトゾーンへ向かいフィニッシュとなる。タッチアンドゴー、インクリップ、3アウトゾーンは各5ポイント(ライン・アングル)となる。それにスタイルの30ポイントで、計100ポイントで争われるのだ。
昨年、同様のレイアウトでFORMULA DRIFT JAPANとFDJ3は行われたが、FDJ2はこのレイアウトで行われるのは初。スピードを乗せた進入から1アウトゾーンでしっかりとアングルを付けて、2アウトゾーンではいかにアクセルを入れて体制を保ちながらどれだけコンクリートウォールに寄せていけるか、さらにアクセルを抜かずにその後をクリアしていくかがポイントになる。
路面コンディションはドライ。1本目から高得点を叩きだしてきたのは、チン シジュン(E92)。第2戦の予選では2位を獲得した単走を得意とする選手で台湾でも活躍中だ。2ゾーンからフィニッシュまでを見事に決めて、84ポイントを獲得。しかしその後、小林竜也(JZX100)が83ポイントとチン シジュンに迫る。さらに青木竜介(JZX100)が1アウトゾーンからすべて見事なライン取りをみせて86ポイントを獲得してトップに立つ。しかしそれで終わらないのが、今年のFDJ2。40番手からスタートしたセナ(JZX100)が、角度を付けた迫力あるドリフトで、89ポイント。ギャラリーから多くの拍手を受けながら、1本目トップとなった。稲岡優樹(ER34)が80ポイント、前大会で優勝した中村総士郎(S15)が84ポイントを出すもセナに追いつけずに1本目は終了した。
2本目、各選手が勢いある飛び込みで迫力のドリフトをみせてくるも、なかなか80ポイントには届かない。1本目70ポイントだったラッセル(RPS13)が87ポイント、1本目に83ポイントを獲得した小林竜也が88ポイントを出すもトップには届かず。このままセナが逃げ切って、単走優勝を飾った。2位は88ポイントの小林竜也、3位には87ポイントのラッセルが入った。1本目に完璧に近いライン86ポイントを獲得した青木竜介は4位となった。
大接戦の予選を89ポイントで制したセナ(JZX100・White River with WAKOS)。
苦しみながらも勝ち抜き頂点に立つ
大波乱の決勝トーナメント
予選上位32名による決勝トーナメントは、曇り空ながらもドライ路面で行われた。トップ32、トップでの対戦は、セナ 対 長瀬幸治(IC350C)という組み合わせ。前年度シリーズチャンピオンで、現ランキング4位の長瀬幸治が予選を66ポイントと振るわず、32位からのスタートとなった。その長瀬幸治が波乱を演出する。
予選トップのセナとの追走バトルとなったが、ワンモアタイムの末にセナを破り、トップ16進出を果たした。長瀬幸治はトップ16で予選17位のMSG MINAMI(S13)を倒してグレイト8に勝ち上がるも、予選24位のウー ティーミー、予選8位の江崎台地(S15)を制してグレイト8進出してきた予選9位の水野俊彦(S15)と対戦。水野俊彦先行の1本目、水野俊彦は見事な先行の走りを決める。後追いの長瀬幸治は進入から1アウトゾーンでやや小さいラインとなってしまう。その後は大きなミスなく走り抜く。長瀬幸治先行の2本目、1アウトゾーンで長瀬幸治がリアタイヤ2脱となり、ここで敗退。得意のエビス西で、水野俊彦はファイナル4進出を果たした。
予選2位の小林竜也は、トップ32で予選31位の杉浦直樹(ECR33)、トップ16で予選18位の西崎智治(PS13)、グレイト8で予選26位ジェイスを倒し、ファイナル4進出を果たす。
予選3位のラッセルは、グレイト8まで順調に勝ち進むも、トップ32で予選27位の篠内秀一(S14)、トップ16で予選19位のツァンアリス(JZX100)を倒してグレイト8に進出してきた予選6位の中村総士郎に敗れて、ここで姿を消す。
予選4位の青木竜介は、トップ16で予選20位の井上スチュアート(S15)との対戦でワンモアタイムとなるも辛くも制してグレイト8に進出。グレイト8では、予選12位の山口洋平(S15)を破ってファイナル4進出を決めた。
ファイナル4の1組目、FDJ2では初のファイナル4進出となる青木竜介と2年前のFDJ2のエビス西ラウンドで優勝経験のある水野俊彦の対戦。1本目、先行の走りをこなす青木竜介に対して水野俊彦もまったくブレることなくしっかりとついていく見事な追走をみせる。2本目水野俊彦の先行、両者ともに見事な追走をみせたが、2本目の後追いで青木竜介が3アウトゾーンでアングルが浅くなりラインが小さくなった点で、水野俊彦の勝ちとなった。
ファイナル4の2組目、常に上位争いをする小林竜也と第2戦で優勝した中村総士郎の対戦。1本目小林竜也が先行での走り、両者ともに良い追走で走り抜く。2本目、先行の中村総士郎は、アングルのある走りと乱れぬラインで決めていく。後追いの小林竜也はややアングルが浅くなり車間距離もやや空いたという点で、この戦いは中村総士郎が制した。
ファイナルは、中村総士郎 対 水野俊彦。中村総士郎先行の1本目、先行の走りを決める中村総士郎に食らいつく水野俊彦。これぞドリフト追走という走り。水野俊彦先行の2本目、キレイな追走をみせる2台、ここでは決着が付かず勝負の行方はワンモアタイムへ。
ワンモアタイムでの1本目、先行の中村総士郎は、1アウトゾーンで脱輪しながらも攻めまくる後追いの水野俊彦。2本目は、先行する水野俊彦が狂いの少ない先行で決めると、後追いの中村総士郎がやや距離が空く感はあったが見事な追走となった。
この戦いを制したのは、2年振りの優勝となる水野俊彦。勝ち名乗りを聞いた瞬間、崩れ落ちて涙を流した水野俊彦の姿は感動的だった。2位は中村総士郎、3位は小林竜也となった。ワンモアタイムの末に決着したファイナルは、後追いの差で決まったものとなった。1本目、中村総士郎の先行時の進入から1アウトゾーンにかけてラインが小さくなってしまったことで水野俊彦が流されたように見えた。その後の走りも果敢に攻めた。中村総士郎の後追いの走りとの差が勝負の分かれ目となった。
これでシリーズチャンピオン争いも熾烈となる。シリーズランキングトップは、今回2位の中村総士郎がキープ。2位に今回優勝の水野俊彦が続き、3位には開幕戦優勝の江崎台地。そして4位には今回単走優勝のセナ、そして5位には長瀬幸治が付けるという展開。残り3戦、まだまだシリーズチャンピオンは誰もが狙える位置となる。上位選手はもちろん、会選手も含めて、今後の戦いに注目していきたい。
FDJ2 Round.3 優勝
水野俊彦(S15)
一昨年のエビス西ラウンド以降、優勝から遠ざかっていたが、コースレイアウトは変われど得意のエビスでは負けられないと挑んだ今回、予選9位からファイナルに進出し、勢いある中村総士郎を下して優勝に輝いた。これでシリーズランキングも2位に浮上した。
優勝した水野俊彦。仮表彰で勝利宣言を受けてこらえきれず号泣した姿は感動的だった。
仮表彰。優勝の水野俊彦(中央)、2位の中村総士郎(左)、3位の小林竜也(右)。
ステージトラックで行われた表彰式。優勝の水野俊彦(中央)、2位の中村総士郎(左)、3位の小林竜也(右)。
FDJ2 Round.3 2位
中村総士郎(S15)
前戦を制して勢いに乗り、今回も乱れぬ走りでアピールし続けたが、ファイナルでは水野俊彦に敗れ準優勝。しかしシリーズランキングはトップをキープ。
FDJ2 Round.3 3位
小林竜也(JZX100)
崩れることなくしっかりとした安定した走りで、常に上位争いに加わる。今回はトップとは1ポイント差の予選2位からファイナル4に進出したが、中村総士郎に敗れ、3位に終わった。
FORMULA DRIFT JAPAN Round.1 4位
青木竜介(JZX100)
初のレイアウトで行われた今回、予選1本目からラインをキレイにトレースする上手さを見せつけ、予選4位を獲得。決勝トーナメントでもファイナル4に進出を果たした。
FDJ2 Round.3 5位
ラッセル(RPS13)
予選3位を獲得し、特にコンクリートウォールを果敢に攻める姿でカッコ良さをアピール。ファイナル4ではワンモアタイムに持ち込むも中村総士郎に敗れて5位となった。
FDJ2 Round.3 6位
山口洋平(S15)
予選12位から、決勝トーナメントで水井大輝(S15)、チンシジュンを破り、グレイト8進出を果たした。シリーズランキングは第2戦終了時同様の10位をキープ。
FDJ2 Round.3 7位
ジェイス(Z33)
予選は26位と本領発揮出来ずに終わったが、決勝トーナメントでは予選7位のHINATO(JZX100)、予選23位のイェンケン(SXE10)と、予選上位を倒してグレイト8に進出した。
FDJ2 Round.3 8位
長瀬幸治(IS350C)
予選では1本目に66ポイント、2本目は0ポイントと振るわず。32位で決勝トーナメントに進出。しかしトップ32で予選1位のセナを倒すなどグレイト8進出を果たし、底力を見せつけた。
FDJ2 Round.3 9位
チン シジュン(E92)
予選1本目で84ポイントをマークし、予選5位通過を果たす。決勝トーナメントではトップ16で山口洋平に敗れ9位に終わった。
FDJ2 Round.3 10位
江崎台地(S15)
開幕戦で優勝するも第2戦では10位に終わった。今回も予選8位からトップ16に進出するも優勝した水野俊彦に敗れ、今回も10位となった。
FDJ2 Round.3 11位
糸山宗兵(RPS13)
予選11位からトップ16に進出したが、中村総士郎に敗れて11位。シリーズランキングは18位から14位に大きくステップアップした。
FDJ2 Round.3 12位
MSG MINAMI(S13)
予選1本目は74ポイント、2本目は72ポイントと安定した走りで予選17位を獲得。決勝トーナメントではトップ32で川瀬羚也(S14)を破ってトップ16進出を果たした。
FDJ2 Round.3 13位
西崎智治(PS13)
予選では1本目75ポイント、2本目73ポイントを獲得し、予選18位を獲得。決勝トーナメントでは予選15位の永広和也(S14)を破り、トップ16に進出。トップ16では小林竜也に敗れ、13位となった。
FDJ2 Round.3 14位
ツァンアリス(JZX100)
予選2本目で、75ポイントを獲得し、19位で決勝トーナメントに進出した。トップ32で予選14位の出口公信(S15)を倒してトップ16進出を果たした。
FDJ2 Round.3 15位
井上スチュアート(S15)
勢いある走りを練習走行からみせていたが、予選1本目は0ポイントとなり、2本目に75ポイントを獲得して決勝トーナメント進出。トップ32ではワンモアタイムの末、木村楓雅(JZX100)を破りトップ16に進出。青木竜介と対戦したトップ16でもワンモアタイムとなり、そこで敗れ、15位に終わった。
FDJ2 Round.3 16位
イェン ケン(SXE10)
予選23位から決勝トーナメントに進出し、予選10位の稲岡優樹(R34)を倒してトップ16進出を果たした。
Photo:NOBUTOSHI KANEKO(金子信敏)